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映画『ビバリウム』(2019)
極限のラビリンススリラー
ビバリウム (VIVARIUM) とは?
無限に続く同じ家と、カッコーの托卵がテーマの不条理劇
『ビバリウム (VIVARIUM)』は、アイルランドの新鋭ロルカン・フィネガン監督が描く、SF・サスペンス要素を持つ不条理スリラーです。
「ビバリウム(vivarium)」とは動植物の飼育容器を意味し、映画冒頭のカッコーの托卵の描写が、物語全体を象徴しています。
現代社会におけるマイホーム願望や「理想の家族」という概念を、悪夢的なシチュエーションで風刺した異色作です。
| 項目 | 内容 |
| ジャンル | SF / サスペンス / ホラー |
| 監督 | ロルカン・フィネガン (Lorcan Finnegan) |
| 脚本 | ギャレット・シャンリー (Garret Shanley) |
| 出演 | イモージェン・プーツ(ジェマ)、ジェシー・アイゼンバーグ(トム) |
| 日本公開 | 2021年3月12日 |
| 上映時間 | 98分 |
| レイティング | R15+ |
YouTube予告編
ビバリウムのあらすじを解説|ようこそ、悪夢のマイホームへ
マイホームを探す若いカップル、ジェマとトムは、ある日、不気味な不動産屋マーティンに「ヨンダー」という新しい住宅地を紹介されます。そこは、同じデザインの家が果てしなく立ち並び、住人の気配がまったくない薄気味悪い場所でした。
内見を終え帰ろうとする二人でしたが、車をどこまで走らせても必ず「9番」の家に戻ってきてしまいます。完全に閉じ込められた彼らの前に、「育てれば解放される」というメッセージと共に、正体不明の赤ん坊が段ボール箱で届きます。
出口のない住宅地で、人間離れした早さで成長し、奇妙な言動を繰り返す少年に翻弄されるうち、二人は徐々に精神的に追い詰められていきます。
ビバリウムの見どころ|観客をも当惑させる不条理な恐怖と深い考察ポイント
『ビバリウム』は、派手なアクションやショック描写よりも、じわじわと精神を侵食する閉塞感と不条理が最大の魅力です。
特に以下の点に注目して観ると、この映画の持つ深みが理解できます。
1. 無限に続く緑色の家が誘う精神的閉塞感(アメニティの悪夢)
住宅地「ヨンダー」の全ての家、空、雲までが同じように見える異様な均一性は、視覚的な圧迫感を生み出します。 これは、現代社会における「理想の郊外住宅」や「規格化された暮らし」への痛烈な風刺です。夢のマイホームが、実は逃れられない刑務所であり、個性を否定するシステムそのものだと示唆しています。ジェマとトムがいくら叫んでも、助けを求めても、誰もいない静寂が返ってくる設定は、現代の都市に住む人々の孤立感をも象徴しています。
2. 不気味な「少年」の存在とカッコーの托卵のメタファー
カップルのもとに送りつけられる「少年」は、人間の子供としてはありえない速度で成長し、トムとジェマの言葉や感情を正確に真似ることができません。
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「少年」は、純粋な「複製者」であり、人間的な感情や愛着を持たない「異物」です。
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映画冒頭で描かれる「カッコーの托卵(かくらん)」は、この少年の役割を明確に示しています。カッコーは他の鳥の巣に卵を産みつけ、親鳥に自分の子を育てさせますが、『ビバリウム』では、ヨンダーのシステムがカップルに「繁殖」と「養育」という役割を強制しているのです。
3. 脱出不可能なラビリンス(迷宮)としての「ヨンダー」
トムが脱出のために地下を掘り続けたり、ジェマが道を探し続けたりしますが、努力は常に無駄に終わります。 ヨンダーは物理的な迷路というより、論理や理性が通じない不条理なシステムそのものです。これは、現代人が仕事やルーティン、借金(住宅ローン)といった社会のシステムに囚われ、そこから抜け出そうともがく姿と重なります。
4. 壊れていくカップルの関係性と役割の強制
ジェマとトムの関係は、この極限状況下で決定的に変化し、破綻していきます。
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トムは外への脱出と現実逃避のために庭を掘ることに執着し、次第に暴力的な行動に出ます。
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ジェマは否応なく母親の役割を強いられ、少年に複雑な感情を抱きながらも、現実に対処しようと試みます。 彼らが個人としてではなく、「父」と「母」という役割(ロール)としてシステムに組み込まれ、消耗していく過程は、痛々しくも示唆に富んでいます。
まとめ|ビバリウムは「マイホーム」という夢の裏側を描く衝撃作
『ビバリウム』は、ただのホラーやスリラーで終わらず、現代人が抱えるマイホームへの憧れや、家族というシステムそのものに疑問を投げかける哲学的な作品です。
不条理な設定と、誰も助けに来ない孤立無援の絶望感が魅力。結末まで静かに、しかし確実にあなたを追い詰める衝撃作です。
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